「前向き!タイモン」出演者インタビュー_02

 

日時:2013年7月26日

伊藤み弥 × 山本圭祐・鈴木将一郞・笠木泉

第2回

 

◇役とワタシ

伊藤:興味深いお話でした。ちなみに、ご自分の役と自分自身に接点みたいなのは感じますか?

笠木:私はメイドという役ですが、始めはピンとこなかったんです。自分は世に言うメイドっぽくないですし、年齢的にもメイド服を着ることがコスプレに近い部分があったので、「大丈夫かな?」みたいな感じで。メイドは人の話もあんまり聞いてないし、適当に生きているけども、でも不満もあって、でもやっぱりメイドとして前向きに生きていく、みたいな。なんかこう自分で完結しようとしてるんですね、一生懸命。自分も何かそうやって生きてるなって思うことがあって、彼女をものすごく身近に感じるようになりました。不満が蓄積していて、あまり人に言えないようなことをエネルギーにして生きていて、そんな自分をすごく可哀想だと思ってしまったりとか。そういうのって恥ずかしいし、とても醜い。でもメイドはそれを全面的に出しているから、やっていて気持ちがいいですね。彼女は相当テキトーな生き方をしています。真剣だけど、苦悩の質が低い(笑)。でも何か可愛らしいなと思いますね。

伊藤:役づくりで悩むことはなかったですか?

笠木: いわゆる「役づくり」をあまりしないので、その悩みはないです。ただ初演の時は、物語を追うのに精一杯でメイドという人間が本当に持っている悲しい感じとか、心の闇とか、えぐいところとかが、あんまり理解できてなかったなといま思っています。だから再演できて良かったなってすごく思っていて「あ、メイドってこうやってタイモンを馬鹿にしてたんだな」ていう発見がやればやるほど出てきてます。

伊藤:なるほど。では、タイモンはどうですか?

鈴木:タイモンは割とそのまま自分に当てはまるなあと思うところは多々あるんですけど…生きるって基本的にあんまり良いことがないじゃないですか。

伊藤:うん。ないね。

一同:(笑)

鈴木:辛いこととかしんどいことの方が多いかなと僕は思うんですけど、それでも明日も生きてかなきゃいけない。何か自分を納得させて前を向くようにするようなところとか。とにかくタイモンは待ってるんです、いつ来るか分からない何かを待っている。それはまさに人生なんじゃないか、俺もそうかもしれない、ずっと待ってるのかなあ、みたいなところが。

伊藤:役とのギャップに悩むことはなかったですか?

鈴木:僕もそんなに考えない、と言うか、ギャップはあんまりなかったかもしれないですね。矢内原さんの台詞って、割と誰にも当てはまらない、逆に言えば誰が喋っても良いようなところがあるんですよ。

山本:そうそう。僕が前に3人芝居に出たとき、男2人女1人で主人公は姉と弟なんですけど、その姉の台詞が、弟の友達である僕の台詞になっていくから、僕は最初「どういうことなんだろう?」と思った。これはお姉ちゃんとして言ってることなのに、どんどん僕の台詞になっていくから、すごく不思議な感じだったんです。まあやってるうちに慣れましたけど。

笠木:やっぱり普遍的と言うか、「役で言う」感じじゃなくて、「笠木泉」としてその台詞が言えれば特に問題がない気がします。

山本:やる前に考えちゃだめですね。とにかくまず「やる」ってことが大事で。その後でついてきたりする部分もあると思うんです。

伊藤:では、農民の役とご自分との接点はありますか?

山本:なんかほんとにそっくり…そっくりじゃないですけど、何て言うんですか?

鈴木:そっくり(笑)

山本:「弱きを挫き、強きを助ける」と言うか、強い人には媚びて、自分が失敗したり人を裏切ったり何かあると誰かのせいにして生きていくんです。

笠木:農民とメイドは最低だよね(笑)

山本:そうですね、誰かのせいにしてあまり気にしてないように見えて、実は気にしてたりする部分もあるんじゃないかなとか思ったりもするんですけど、基本的には嫌なヤツで、でもそれが生きていく上で必要なことだったりすると思うんです。改めて思うと、自分でもこういうところいっぱいあるなあと思います。そういうヤな人間なんですよ、僕も(笑)

笠木:そうだね(笑)。

 笠木泉

◇台詞のこと

伊藤:ところで、みなさんそれぞれ好きな台詞はありますか?

笠木:いっぱいあったなあ…

山本:好きな台詞かあ…(すごく悩む)

鈴木:3人共通で言うと、おそらく「ポップコーン」。

一同:ははははは(爆笑)

山本:そうだそうだ、最高でしたねえ。

笠木:台本上がった時にほんと笑ったもん。いきなり「ポップコーン」って書いてあって。「あ、ポップコーンって言うんだ」と思ってね_。

鈴木:とにかく「!」マークが書いてあったから。

笠木:取りあえず本読みの時に「ポップコーン!」って言ってみたんですけど全く脈絡がなく出てくる台詞で。

山本:美邦さんが一人で大爆笑してましたもんね。

鈴木:言わせたかっただけなんじゃないかって思う(笑)

山本:自分で書いといて(笑)

笠木:思いついたんだね、家でね。「ポップコーン」って言わしてみようって。

山本:家で爆笑したんですかね。

鈴木:でもほんと前向きな食べ物だしね。前向きな言葉ですよね「ポップコーン」って。

笠木:引っ張られたよね、あの台詞には。

伊藤:まず最初が破裂音だし。

笠木:でもそれが好きな台詞っていうのも何ですよね、他に良い台詞がほんとにいっぱいあるんですけど…

鈴木:しゃべってて「うわ、これすごく良い台詞だったんだ」って気付く時がある。

伊藤:美邦さんはストーリーテラーか、あるいは詩人か、そのどっちもか、と問うならば、そのあたりはいかがですか。

笠木:構成して順序立てて書いてるのかなと思うと、場面が突然飛ぶことがあるんです。それはもう役者の動き一つで飛べるっていう美邦さん独特の方法があるので、読んでいる私たちがちょっと理解できない時があるんですね。でも最終的に台本が出来上がって美邦さんの説明を受けると、きちんと筋が通ってるんですよ。それはびっくりしますね。この間もみんなでちょっと喋ったじゃない?

鈴木:ああ、夜に?

笠木:そう。「だからタイモンはこの時にこういう台詞を言うのは、こういう裏の設定がここにあって」みたいなことを言われて、私たち2年間もこの作品やってるのに「えー!?」みたいな。「そ、それは早く言っていただければ…」みたいな(笑)

一同:(笑)

鈴木:思いつきで適当に書いてんじゃないか?みたいに見えるけど、最初に「これを書く」っていうすごい太い幹みたいなものはあるから、後はなに書いてもたぶん成立しちゃうんじゃないかという気はしますね。だから抜粋して一つのやり取りだけを見ると「何だこれ?」って全く意味わかんないみたいなんですけど、作品全体になってみると何か腑に落ちるんですよ「あ、なるほど」って。それはすごいと思う。
山本圭祐

◇再演のワタシ

伊藤:先ほど笠木さんから「再演していろいろ発見があった」とありましたが、 鈴木さんと山本さんはいかがですか?

山本:そうですねえ、毎回通し稽古とか本番前とか「ああ…やるのか…」って(背中丸めてため息)

鈴木:それ、別に再演も初演も一緒じゃないか(笑)

山本:いや、再演のときに特にそうなります。

笠木:口癖だもんね、本番前に「一時間後になってないかなあ」って。

山本:そうそう。時間が飛んでほしいんです。

伊藤:それはなぜですか?緊張するって意味?

山本:緊張もそうですけど、ほんとにもうくったくたになるんで。でもやっぱ笠木さんが言ったように再演することによって分かったことがほんとにいっぱいある。初演の時はもう「わーっ」ってやることしか考えてなくて、美邦さんと話す時間もそんなになかったし、稽古もばーって詰め込んだんですね。で、この間、伊丹での再演のとき美邦さんとゆっくり話す時間があって、やっぱり自分が気づいてなかったことがいっぱいあって「ああそうなんだ!」って思いました。あと、劇場が変わると動きがすごく変わるんで、タイヘンです。

伊藤:じゃあ再演と言えど、全く油断できませんね。

山本:できないですね。

笠木:年も取ってますしね、2歳。

山本:それは言うのやめましょうよ(笑)

笠木:だって年齢的にキビシいよ、もう。

伊藤:「これがラストステージ」とか(笑)

笠木:もうほんとに危険な…肉体的にちょっと黄色信号が(笑)。まあ山本くんとかは若いので大丈夫ですけど。

山本:いや、僕ももうしんどいっすよ。

伊藤:プロテイン飲みながら、とか。

山本:アミノバイタルですね。

伊藤:ああ(笑)。鈴木さんは再演にあたってどうですか?

鈴木:そうですね…岸田(戯曲賞)の冠が付いたっていうこともありますし、再演を敢えてやるっていうのは、何か重荷みたいなのはあるかな。それと、やればやるほど自然にチームワークが生まれてしまうんですけど、そこを、どうもっと孤独にタイモンをできるか。3人がもっと孤独に、一人に一人になった方が良いと思うんです。おそらくやればやるほど勝手に上手く仲良くなってしまうものをどう孤独にできるか、っていうところは初演の時よりもやっぱり意識してやらないと。

◇舞台とか映像とか

伊藤:私、笠木さんは冨永昌敬監督の映画でお馴染みだったので、今回は舞台で生で見られるという喜びがあるんですけど、みなさん映像での演技と舞台上の演技はどう切り換えているんですか?

山本:基本的には「映像だから」「舞台だから」と思ったことはないです。

笠木:私は演劇の場数の方が多いので、映像はアウェイな感じがしちゃうんですよね。だから緊張するし…私は不器用なので すごい時間がかかるんです。だから本番まで何度も何度も稽古をちゃんとするっていうことが自分にとって唯一の演技をするための道なんですけど、映像に関して言えば稽古がないので、ほんとにドキドキしちゃって、毎回あたま抱えて撮影から帰るんです。でも、冨永君は大学時代から一緒にやっているので、もう身内と言うか、他の監督さんとは違う「私の面白がり方」が彼なりにあるみたいで「その不幸な顔が面白い」とか、誉めてんだか貶してんだか、そういう使われ方で(笑)、富永君はちょっと別です。やっぱり撮影現場に初めて行く時は怖いですね。だから勉強しなきゃなって思うし、映像での「瞬発力」みたいなことはありますよね。

山本:あるね。

鈴木:僕はそんなに映像やってないんで、今後考え方が変わるかもしれないんですけど、今の時点では…もちろん舞台では声を映像よりは基本的には大きく出さなきゃいけないし、大きく動くこともあるとは思うんですけど、やっぱり根本は同じ。

笠木:だよね。方向は一緒だよね。

鈴木:今はそう思います。それは客観的に見ていても、一人の俳優さんが映像と舞台とで全然変えてやってる人を見ると、ちょっと違和感を感じるんですよね。
鈴木将一郞

◇胃の痛い話

伊藤:さて、ロングラン公演の乗り切り方について伺います。 一般の観客として見ると「何回も同じ事やって飽きないのかなあ」とか余計な心配しちゃうんですけど、何か秘策はありますか?

笠木:ミクニヤナイハラに限って言えば飽きることはない、と言えます。

山本:緊張しますからね、めちゃくちゃ。

笠木:毎回ほんっっっとに怖くて。始まる前にほんとにお腹痛くなりそうになるって言うか、何年も演劇やってるくせにこんなでいいのかって思うくらい緊張するんです。それは、その速度に自分が一瞬でも置いて行かれるともう乗っていけない、それをお客さんの前で出してしまった瞬間にもう終わりっていう恐怖心があるので、ミクニヤナイハラに関しては慣れるってことはないですね。私は割と臆病なので、一個一個しらみつぶしに不安要素を消していかないと舞台に上がりたくない者なので、ミクニヤナイハラはほんと地獄のような(笑)。むしろ不安要素だらけ、みたいな感じで。

鈴木:逆に早く慣れたいんですけどね。できない。

伊藤:話を聞くだけで胃が痛くなります。

鈴木:始まったら止まらないもんなあ。

山本:フィギュアスケートと似たような感じ。一個のミスがもう…。

笠木:フィギュアね!すごい分かる。

山本:一回始まったらもう最後まで滑りきらなきゃいけない、みたいなところが似てる。

笠木:世界選手権とか見ていて、誰か失敗した時にうちの親とかが「まったくもう」とか言うんだけど、それがすごいムカつくの!「あの人だって頑張ってんだよ!」って(笑)。

山本:僕たちと同じような緊張感だと思いますね、滑る前の緊張感とか。

笠木:だからそれを他人がね、うちの親とかがとやかく言うのがイライラする。

伊藤:「なんにも分かってないくせにっ!」って?

笠木:そう、「どれだけの精神状態でこの人たちはリンクに立ってると思ってるの!?」って、まあ私は彼らの足下にも及ばないですけど、そう思ったりしますね。

山本:そうですよね。

伊藤:うわー、本番を見るのがすごく楽しみになってきました。

笠木:ごめん、ハードル上げちゃってる(笑)

 

※第3回は8/14に公開します。

「前向き!タイモン」仙台公演詳細はこちらから→