「前向き!タイモン」出演者インタビュー_01

7月末。「前向き!タイモン」の出演者が来仙しました。8/15-16とせんだい演劇工房10-BOXで行われる、ミクニヤナイハラプロジェクト「前向き!タイモン」仙台公演を前に、既にツアーが始まっている出演者のお三方に、伊藤み弥さんによるインタビューをお願いました。対談記録という形式(全三回)で綴っていきます。


日時:2013年7月26日

伊藤み弥 × 山本圭祐・鈴木将一郞・笠木泉

第1回


◇イントロ/センダイとワタシ

伊藤:みなさん、ご出身はどちらですか?

山本:僕は愛知県の東海市っていう、名古屋からセントレア空港に行く途中のところです。

鈴木:僕は東京の練馬区ってとこなんです。

笠木:私は、生まれは福島のいわきです。

伊藤:あ、そうなんですか!

笠木:はい、いわきの小名浜で生まれて。父と母がいわきの人間で、その後仙台に引っ越してきて、千葉に引っ越して、東京、みたいな。転校生ですね。親は今もいわきにいます。

伊藤:じゃあ仙台はおなじみ?

笠木:いえ、ほんとに子供のときなので淡い記憶があるぐらいです。エンドーチェーンとかエスパルとか…あと若林区の仙台味噌の工場とか。古城小学校の近くに住んでました。

伊藤:これは意外ですね。「仙台は初めてですか?」 なんて話題を振ろうかと思ったんですけど。

笠木:でも、大人になってから来てないから。

山本:僕、荒吐で来ました、「荒吐ロックフェスティバル」。

伊藤:誰が目当てだったんですか?

山本:銀杏BOYZとか、たくさんいました。でも5、6年前ですかねえ。

鈴木:僕は、何か旅行で来たくらいですかね…追分温泉って分かります?

伊藤:どこ?

笠木:山形?

伊藤:秋保?作並?

鈴木:あ、知らないですか。

伊藤:知らない。

山本:秘境なんじゃないすか。

笠木:そういうの好きなんだよね、秘境みたいなの。

鈴木:どっか行った帰りに牛タン食べて帰る、みたいな感じなので仙台に用事があって来たってことはないですね。

伊藤:ということは、仙台の街なかで、しかも芝居を打つというのはみなさんにとって新鮮な体験ですか?

笠木:新鮮です。

伊藤:知らない街に来て芝居を打つ、ってどんな感じですか。

笠木:ずっと東京で演劇をやっていて、でも東北で公演する機会がないんですよね。それが残念だし「どうしたら行けるかな」なんて思ってて時間だけ過ぎちゃって…だからすごい嬉しいです。それこそ親戚一人一人が来てくれるというレベルじゃなくて、もっともっと遺伝子レベルで「やったー!」みたいな、そんな感じはします。

伊藤:血が騒ぐ、みたいな?

笠木:そうそう。そんな感じですね。

伊藤:ネイティヴ東京人の鈴木さんはどういう感じなんでしょう?

鈴木:「旅」公演っていうくらいなので、浮つく感じはちょっとあるんですよね。

伊藤:遠足的なウキウキ感?

鈴木:やっぱり東京でやるのとちょっと違いますね。そんなに意識はしていないですけど、どうやってこう地に足をつけるのかみたいな作業が多少あるかもしれませんね。やっぱり東京だと、すっ、と入っていけるんですけど。

笠木:多分ね、自然に浮かれちゃうんだよ(笑)

鈴木:知らない土地に行くと嬉しくなっちゃうんで。

笠木:コンビニでいっぱいお金つかっちゃうタイプ。「家じゃないからヨーグルトいっぱい買っとかなきゃ」みたいな、そういうタイプ。(笑)

鈴木:こういうところ来ると金銭感覚が全くわかんなくなっちゃって、値段見ないで「とりあえず美味いもん食わないと損だろ」みたいな感じになっちゃうんすよ。(笑)それをどう通常の感覚に戻すかっていうのが…

笠木:それは大事だよね。舞台に上がるときも一緒だからね(笑)

伊藤:面白すぎる(笑)山本さんはどんな感じですか?

山本:仙台に限らず、知らない町に行くだけでまず楽しいです。それと、お客さんがどんな反応するのかがすごく楽しみです。東京だと知ってるお客さんとか演劇関係の人が来たりするけど、地方の全く知らない人が来てどう思うのか、あと、地元の人とじかに話せたり一緒にごはん食べたりして、新鮮で楽しいですよね。

鈴木:ちゃんと考えてんだー。その土地の「大吉」に行くことしか考えてないと思ってたけど(笑)。

山本:大吉(やきとりの全国チェーン店)が好きなんです。

伊藤:わははは(笑)。

 

◇演劇との出会い

伊藤:仙台のお客さんにしてもみなさんと会うのが初めてなので、個人的な歴史をお聞きしたいです。そもそも演劇やろうと思ったきっかけは何ですか?

笠木:私は子どもの時から運動が全然できなくて、ものすごくコンプレックスがあったんです。「よーいスタート!」ってなったら後ろに下がってた写真が残ってるんですけど(笑)、なんかこう、ちょっと人よりも劣ってて、それがすごく恥ずかしいと思って生きてたんですけど、 小学生のときに、卒業生を送る会でお芝居をした時に、先生に誉められたんですよ「声が面白い」とか。それから「誉められるなら」という気持ちがあって、ずっと学生の頃もやって、で、大学生の時に宮沢章夫さんに出会って、そこからはもうやめるということも考えずにここまでやってきたという感じですね。

伊藤:宮沢さんとの出会いが大きかったんですね。

笠木:はい。上手くなくても良い、って言ったら変ですけど、上手い人じゃなくて、何かちょっと身体が歪んでたりすることを「そのままで面白い」というようなことを言ってくださって。私、すごい内股なんですけど(笑)、そういうのもあって運が良かったとしか言いようがないんですけど。その時に出会っていろいろ教えてもらったことが大きいですね。

伊藤:高校演劇もやってたんですか?

笠木:たまにやってましたね。

鈴木:「たまに」ってなんすか?

笠木:いろんなのやってたから。美術部もやってたし。だから文化部はほぼ…

鈴木:文化部総なめっすか!?

山本:そんな何個も入っていいんすか?

笠木:兼部していいの!だからクイズ研究会も入ってた。

伊藤:じゃ、例えば月曜は美術部、火曜はクイズ研究会みたいな感じですか。

笠木:はい。運動ができないんで、文化部は総なめ(笑)。あとは「詩歌鑑賞部」とか。

鈴木:何ですかそれ?

笠木:詩を読むの、宮沢賢治とか。

山本:…今日は僕らにとっても初耳の話がいっぱい出てくるんですけど。

鈴木:ガリ勉?

笠木:ガリ勉じゃないよ、結構クラスでは人気者だったよ、シャベリが立つから(笑)

鈴木:すごいな。俺、絶対友達になんないと思う。

笠木:いやいやいや。でも、私のこと「あいつ、何だ」って嫌ってた人もいたと思う。まあ、サブカル好きというか、映画好きで、演劇も好きで、何でもちょっとずつやってみたいという感じでしたね。

伊藤: なるほど。では、鈴木さんのきっかけを伺ってよろしいですか?

鈴木:僕は、何もやることがなかったんですよ。服飾の専門学校にまちがって行っちゃって、卒業して何にもやることなくて、とりあえず地元のレンタルビデオ屋で「楽そうだから」って理由でバイト始めて。そのころ映画とか演劇とか興味もなかったですし。でも、バイト先でいろいろタダでビデオ見てたら、面白いなって思い始めた、のがきっかけなんですかねえ。

伊藤:そこから東京乾電池へは?

鈴木:見ていたビデオに柄本明さんがいっぱい出ていて面白いと思っていたのと、僕、小さい頃に志村けんが大好きだったんで、「志村けんさんと一緒にコントをしている人」っていう印象がすごく強くて、「あ、あの人が劇団やってんだ!」「あ、ベンガルさんもいる!」「高田純次がいたんだ!」っていう感じで乾電池に入ったんですよ。

伊藤:オーディションで?

鈴木:そうです。研究所みたいなのがあって、一回落ちて、翌年もう一回受けたんですよね。一年間何もせずにいて、気がついたら一年経ってて「あ、またやるんだ」つって(笑)

笠木:のんびりしてるなあ(笑)

鈴木:「君、去年も来たよね?」とか言われて「やべ、バレた!」って(笑)。研究所を2年目も受ける人ってあんまりいないみたいですね。

笠木:まあねえ、他の劇団入っちゃうよね。

伊藤:でも「僕は乾電池しかない」って思ったんですか?

鈴木:あんまり他のところには興味がなかったですね。まあそんなに調べたりとかしてないと思うんすけど(笑)当時はインターネットとかもなかったから。

伊藤:そこで養成所的な訓練をされるわけですよね?想像とギャップがありましたか。

鈴木:ありましたねえ。「志村けんとコントやってるあの柄本明なんてどこにもいないじゃないか」みたいな(笑)。一年間週2回通うんですけど、柄本さんは忙しいからほとんど来ないんですよ。柄本さんの右腕みたいな人が専任講師で、一年中ずっと即興をやるんですよ。その場で「2〜3人で組んで」って言われて、お題も何にもなくて、10分話し合って「はい、じゃあ」ってやるんですけど、誰も笑わないんですよ。もう「やりたくねー」って毎日落ち込んで帰って、憂鬱なまま次の日行くっていう繰り返し。で、一年経って、残って劇団員になって、っていう感じですね。

笠木:よくやめませんでしたね。

鈴木:そうですね。全くそういう経験がなかったのでそれなりに新鮮で面白かったんだと思います。

山本:すごいな、何の経験もなく急に即興なんすね。

伊藤:では、山本さんの場合は。

山本:僕も演劇とか全然興味なくて、と言うか「演劇」って言葉を聞いたことがなかったと思いますね、田舎なんで。「ライオンキング」とかそういうのがお芝居だと思ってたんです。僕、本当は通訳かスポーツのインストラクターになろうと思って、高1くらいから「外語大か体育大のどっちにしようか」って悩んでたくらいなんですけど、高校2年の時にすごく仲良くなった子が「俺は日本映画学校に行く」って言い出したんですよ。「俺は監督コースに行くから、お前は俳優コースに行けばいい」って言われて、めちゃくちゃ仲良かったんで「いずれ俺が監督してさ、お前が映画出てさ…」なんてことを夜な夜なずっと話してたら「行ってみるか」と思っちゃって。そこで間違えたんですけど(笑)。で、親に話したらもちろん大反対なんですけど、半年くらいかけて説得して、試験受けて通って、映画学校3年通って、それ以来ずっとだらだらと…。

伊藤:ちなみにスポーツって?

山本:自分がスポーツするんじゃなく、インストラクターです。トレーナーとか整体とかやりたかったんすよね。中日ドラゴンズの通訳とかトレーナとか。中日が好きなんです。

伊藤:はあ。で、その友達は今どうしてるんですか?

山本:友達はもう映画から離れちゃってグラビアアイドルのDVD撮ってますね。だから年の半分くらいバリ島に行ってます。「映画やんないの?」って言ったら「金貯めてからやるよ」って言ってましたけど。

 SONY DSC

◇美邦さんのこと

伊藤:山本さんは専門学校を出てから、いろいろ引き合いがあったんですか?

山本:もう斡旋も何もないんで、とにかくオーディション受けようと思って、で、オーディション受かって、そこからちょこちょこ繋がって、そこに矢内原さんが振り付けに来てくれたんです。そしたら矢内原さんから「演劇をやる」って声かけてもらって、という感じです。

伊藤:そうですか。鈴木さんと美邦さんとの出会いは?

鈴木:僕は笠木さんと一緒で、遊園地再生事業団の「トーキョー/不在/ハムレット」で美邦さんが共同演出に入って、そこで初めて出会いました。2004年から05年にかけてですね。

山本:「遊園地×ニブロール」みたいな?

笠木:そう。

伊藤:ところで、美邦さんってどんな人ですか?

山本:天才、ですかね。

笠木:すごいですね。常識がないのではなく、常識では語れない感じの方で、とにかくダイナミックだし、純粋。ほんと子供のような人なんです。演出する時も自分の思いを伝えるために全身で表現したり、怒ったり、笑ったり。全てのことに関して私たちの考えを超えてくると言うか、飛び越えてくるんですよね、やることなすこと。

鈴木:まあ面白いですよね。一緒にいて飽きないですね。

笠木:「魅力的」とはこういうことなんだなって思います。でも、たまに常軌を逸脱したことをしたりするので「え?」と思う人ももしかしたらいるかもしれないですけど。

山本:頭おかしいんじゃないか、って(笑)

鈴木:結構いると思いますけど(笑)

山本:純粋な人ですよね。

笠木:そう、長く付き合えば付き合うほど可愛らしいし、

山本:ロマンティストだし、

笠木:面白いし、

山本:女の子だし、

笠木:作品に対してとか、ダンスや演劇や美術に対してすごく思いが強いから、「ああ自分なんかまだまだだ」と思わされる。

山本:それぞれの感情がものすごく強いんですよね。怒るにしろ笑うにしろ、とても強くて、パワフルっすね。

笠木:たぶん戯曲も、美邦さんの中では言語より先にまず衝動が先にあって、それを一生懸命言葉にされている感じがするんです。だから読んだ時に台本に誤字脱字が半端ないんですよね(笑)。たぶんイメージで、衝動でわーって書いて印刷してくる。最近は私たちも分かるようになったから直さないね。

山本:イメージがすごいんでしょうね、頭の中の広がりが。

伊藤:先日、『静かな生活』を拝見したとき、台詞も動きも膨大だから台本はどんな感じになってるんだろうと気になりました。いわゆる台詞があってト書きがあるんでしょうか。

笠木:一応そうなってます。役もちゃんとありますし。

鈴木:でも、タイモンの台詞が終わったなーと思ったらまたタイモンだったりするんですよ。これまちがいなのか何なのかわかんない。

笠木:アメイジングな体験だよね(笑)。

鈴木:一個ずつそれを疑問に思って「これどういうことだ?」って聞いていったらもう大変なことになると思うんですよね。だから初めて参加する人は相当大変だと思いますね。

笠木:たぶん私とか、将一郞もそうだけど、役者として「いい加減」なんだと思う。何て言うか、多少なりとも「端折る」ことをしていると思うんですよね。その方が先に進めるって言ったら変ですけど、もっと悩まなくちゃいけないことは台本の他にいっぱいあるし。ちょっと端折れる人の方がたぶん楽だよね。

山本:真面目な人はきついかもしれないね、もしかしたら。

笠木:一言一句っていうのだとね、ちょっと厳しいよね。

伊藤:芝居の稽古ってだいたい読み稽古があって、半立ち稽古があって、立ち稽古という段取りがありますけど、そういうのは?

鈴木:ないです。一回読んだらもう、すぐ通しですね。

伊藤:すぐ!(笑)

笠木:台本もらってその場で読むんですけど、次の日はもう立ち稽古なんです。美邦さんは基本的に、役者に台本を持ってほしくないんですね、動かなきゃいけないから。でも台詞は膨大な量なので、みんな寝てないみたいな状態で稽古を始めます。

鈴木:基本的には「次の日には覚えてこい」です。

伊藤:ひー!

鈴木:瞬発力がないと結構大変かもしれない。

笠木:だからほんっっとに疲れますね稽古は。4時間くらいやるともう呂律は回っていないですし、足ももたつくし。最後の方は故障したりもする。

山本:全然休憩を取らないんですよ。矢内原さんは集中力がずっと続くんで。

伊藤:うわあ、稽古場のぞいてみたいなあ。

笠木:そうですよね、他の人とはちょっとやり方は違うかもしれないですね。

鈴木:稽古の見学もおそらく嫌なんでしょうね。制作さんやスタッフさんもある程度完成するまでは稽古場に入れないですよね。

笠木:でも、完成したものを見せたいっていう気持ちはわかりますね。

※第2回は8/13に公開します。

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