今月、福島三郎さん主宰の劇団「丸福ボンバーズ」の7本目の作品となる「玉夢温泉 星影楼にまつわる噺〜その壱〜」の仙台公演が行われます。「丸福ボンバーズ」の仙台公演は今回で6回目。活動拠点は東京ながら仙台でも精力的に演劇活動を行われる福島さんにインタビューを実施。劇団立ち上げのきっかけやご自身の演劇観、今回の作品についてお話しいただきました。

フットワーク軽く、お客さんに自信をもって声をかけられる体制を作りたい

 
━━━演劇ユニット「泪目銀座」として活動してきた福島さんが新たに劇団「丸福ボンバーズ」を立ち上 げたきっかけは東日本大震災でした。「丸福ボンバーズ」のモット―である“敷居は低く、質は高いエンターテイメントを。”はこの時に生まれました。

  • 福島 震災があった時、スポーツ選手やミュージシャンが東北に行って復興支援の試合やコンサートをすることで励ましの思いを届けていましたよね。震災時、僕は東京のパルコ劇場で舞台をやっていたのですが、演劇で何かをするには動きづらい状況でした。すぐ東北に行って何かできるわけではない状況が辛かった。それで、僕らのやっている仕事で何か力になれることはできないものだ ろうか、と仲間と話をして生まれたのが「丸福ボンバーズ」なんです。フットワークは軽く、なおかつプロフェッショナルな芝居を持っていける集団を作ろうよ、と。今ではキャッチフレーズのように言っていますが「敷居は低く、質は高く」演劇を見せる集団を作りたいんだ、と知り合いの役者さんやスタッフさんに声をかけて。はじめは 3 人くらいからのスタートでしたが、賛同してくれる人が増えて今の「丸福ボンバーズ」になっています。

 

丸福ボンバーズ「玉夢温泉 星影楼にまつわる噺~その壱~」作・演出:福島三郎
2016年5月20日(金)〜29日(日)  APOCシアター


一緒にやりたいねー!って人がよくいたりするんです

━━━ 「丸福ボンバーズ」の仙台公演は今回の「玉夢温泉 星影楼にまつわる噺~その壱~」で6回目になります。仙台公演では毎作品、仙台の俳優が出演しているのも気になるところ。「丸福ボンバーズ」が来仙を続ける理由、仙台の俳優を起用する理由とは...
 

  • 福島 これだけ仙台でやれているのは、仙台のスタッフの方が共感してくれて「一緒にやろう」と言ってくれるのが大きいですよね。2 作目「うたかふぇ」の公演の時に初めて来たのですが、その時は「やっと来れた」という思いがありました。被災地に行くことはとても意義のあることだったので、繋がりを作ることができてすごく感謝しています。もう来るなって言われるまで頑張っていきたいです(笑)

  • ―――仙台公演では毎作品、仙台の俳優さんも出演されていますよね。その理由は?

  • 福島 もともとゲスト出演みたいなことが好きなんです。以前やっていた泪目銀座というユニットでも公演ごとにやっていたんです。映画ではよく“友情出演”などテロップに出てくるじゃないですか。でも舞台だとなかなか「じゃあ明日出なよ!」とはいかないんですよ。でもそれをあえてやるのが好きで。「一緒にやりたいねー!」って人がよくいたりするんですよね。お芝居っておんなじことを繰り返すじゃないですか。それをマンネリ化せずに繰り返せることがプロなんですけども、 それでも「今日○○さんが出るよ」って言うだけで演劇をやっている側もみんなワクワクしちゃう。新鮮な気持ちになれるんですよ。このようにちょっとしたエッセンスを入れられることにもなるので、昔から嫌いではないんです。それで、初めて仙台に来るときに、せっかくだから仙台の役者さんに出演してもらおうということになったんです。
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大西さんに対して「何をやってるんだお前は」って思って。

━━━ 今回の「玉夢温泉 星影楼にまつわる噺~その壱~」は、2014年に上演された「NO SURPRISE, NO LIFE!」の続編になるそうです。「NO SURPRISE, NO LIFE!」では若年性アルツハイマーになった主役の女性とその夫を中心にストーリーが描かれましたが、今回はその夫婦 の親友・大西太一にスポットライトがあたります。

  • ―――続編を描くとして、数ある作品のなかでなぜ「NO SURPRISE, NO LIFE!」を選んだのでしょう?

  • 福島 「NO SURPRISE, NO LIFE!」は、話としてはきれいに終わったんですけど、夫婦の親友の大西太一だけ何も解決してないな、と思うところがあって。夫婦の話は、仮に僕が旦那さんだとして奥さんが病気になったら「なんとかサポートしていくんだ」ってなると思うし理解できるんですが、その親友までそれに付き合っている感じで終わっているんですよね。だから、大西さんに対して「何をやってるんだお前は」「それは切り離せよ」って思って。その一方で、ずっと仕事を一緒にやってきた親友夫婦が病気を理由に施設に行って...ってなったら、自分だけそれに対して「がんばれよ」って言えるかな、とかね。ちょっと考えちゃったんですよ。それならその後、大西さんがどうしたのかを書いてみよう、と思って書いたのが今回なんですね。だから大西さんの着地点をつくったような感じです。そんなことしてんの?みたいな感じですけどね。彼、温泉旅館のオーナーになったんですよ。

  • ―――結婚式場の総支配人からだいぶ飛びましたね。(大西太一は「NO SURPRISE, NO LIFE!」 で結婚式場の総支配人だった。

  • 福島 そうなんですよ。どういう経緯でこの温泉をやっているかも全く説明していないので非常にわかりづらいんですよね。僕のイメージでは、湘南ホームズっていうところに夫妻が入所して、大西さんがお見舞いに行った時にその近くの温泉に行ったらそこがたまたま星影楼で。それで、星影楼を終わりにするって言うから大西さんが「もったいないよおばちゃん!」ってなって...っていう設定が一応あって。そこにちょくちょく夫妻が外出許可をもらって温泉に浸かりに来るっていう設定が......全く描かれていない(笑)

  • ―――裏ストーリーですね。

  • 福島 温泉が舞台の「玉夢温泉」なんてタイトルですが、一切温泉感のない芝居です。温泉旅館の客間が舞台で、登場人物が25〜26人くらいなんですけど、普通そんなに客間に人は集まらないので、ちょっと現実ではないような仕掛けをしてやれと思いまして。なんといっぱい神様や妖怪が出てきます。

  • ―――神様と妖怪ですか。すごいですね。

  • 福島 僕、温泉が大好きなんですけど、浸かっていると癒されたりどこか神秘的な力を感じるというか。それで、ふと温泉郷みたいなところにいくと温泉神社って必ずあるな、と思ったんです 。それを調べていたら、泉というものは崇拝の対象らしいんですね。日本に限らずヨーロッパの方でも湧き出る泉っていうのは神秘的な意味合いがあり、そこには神が宿るとされていたみたいで。「お、これは!」と思って、神々が温泉を守っていて...っていう話にしたらどうかなと。だからこれは神様と大西太一さんたちの話です。

 

左から渡辺千賀子、村岡佳奈、福島三郎、小嶋祐美子


今までの丸福ボンバーズの作品の流れにあえて「エイッ」って一石を投じたみたいな。

━━━ 福島さんが「今回は役者さんの見本市」といってはばからない「玉夢温泉 星影楼にまつわる噺~その壱~」。話を聞いていくと、福島さん自身が面白がりながら作っている様子がうかがえました。それぞれの役者さんの技を一同に見ることのできる何やら面白い舞台になりそうです。

  • 福島 見どころは、ひとことでいうと「役者さん」です。これまでは各作品ごとにテーマを僕の中でしっかり決めて作っていて。ここのところ「NO SURPRISE, NO LIFE!」では若年性アルツハイマーという病気をメインに書いてみたり、その後の「NICE EIJI!〜父まるだし〜」という劇では 認知症や介護問題についてとか、ちょっと重たくなりがちなストーリー重視の作品が続いたので、発想の転換なのですが、今回は僕の作るストーリーを役者さんに演じてもらうというよりは「面白い役者さんをいっぱい見たいな」と思ったんです。
  • この劇団も5年目に入ったのですが、その間に役者さんたちがお客さんの前で芝居をすること...技を見せることに対してすごく頑張っていて成長してくれていて。だから、今回は「こいつこんなに面白いよ、こんな技を持っているんだよ」とみんなを見せられるものにしようと。そうしたら、さらにもっと見たくなってしまって、じゃあみんなに2役をやってもらおうと。だから登場人物が20数人いるんですよ。形としては人間と神様&妖怪側の2役をやるという感じです。

  • ―――それで温泉が舞台の話ですよね...どうなるんでしょう (笑)

  • 福島 おかしな話ですよね。見てるお客さんからしても「なんだったんだあれは?」みたいなキャラがいますから。「あいつにこんなことやらせてやれ」とか「こんなこと言わせてやれ」っていうのを書いていたら、ひっちゃかめっちゃかになっちゃって(笑)

  • ―――それこそ見本市。

  • 福島 そういう意味では不親切な作品ですが、逆にすごく見飽きない感じはしますね。だから今までの丸福ボンバーズの作品の流れにあえてこう「エイッ」って一石を投じたみたいな。ストーリーも最後の着地点はしっかり作ってはいるんですけど、それが大きな根幹ではないというか。だから今回、作品への称讃はすべて役者に対するものだと思っていますし、そうであればいいなと思うんです。プロがウソをつくところを見るのが演劇で、ストーリーや演出などはそれをサポートするものだとかしか思っていないので。お客さんの感想で「お話が素敵だった!」って言われたらもちろん嬉しいですけど、それよりも「役者さんがみんな魅力的だった」って言われる方が嬉しいんですよね。裏方が何のために仕事をしているかというと、表方の俳優さんたちが魅力的に見えるためにやっていることなので。だから今回の作品はその最たるものです。




終始和やかなインタビューとなりましたが、その中でも『お客さんにいかに楽しんでもらうか。』について考えている様子が印象に残りました。ぜひこの機会に、福島さんが「役者の見本市」と言い切る「玉夢温泉 星影楼にまつわる噺~その壱~」で演劇の楽しさに触れてみてはいかがでしょうか。